英雄は歌わない

世界で一番顔が好き

No where, now here

山下智久さんの10000字インタビューを読んだ。私の周りでは「読めてよかった」「今だから言える話だなあ」といった言葉少ない感想をぽつぽつ見かける程度で絶賛も否定もあまりみなかったので、何を書いてあるか特に事前情報を入れていない状態で読んだ。感想を一言で言うと、「うわっ山下くんだ!!!」だった。うわっとか言うとなんか嫌がってるみたいだけどそうじゃなくて、私が彼を見なくなってからの7年間は当然私が見てきた彼の続きで、根本から人格が変わるなんてことももちろんなく山下くんは山下くんだという、そういう当たり前の実感だった。当たり前、当たり前なんだろうか。私が彼を見なくなってからの彼が私の見ていた彼の続きだということ。当たり前じゃない気もしていて、もう何も分からないし何も言えないなあと思うこともあって、だから10000字もの長さで綴られる彼の言葉が私の思い出の中の彼と致命的な齟齬を起こすようなことがないことに驚いたのかもしれない。彼は彼だった。


山下くんは2017年、亀梨さんとユニットを組んで「亀と山P」名義でCDを出している。ドラマも2人で出ていたこともあって仲睦まじい様子は時折漏れ聞こえてきた。ものすごく明け透けで品のない言い方をすると、「元彼が忘れられないという理由で振られた元カノがいつの間にか不倫沼にハマっていた……」みたいな気分が少なからずあった。いやほんと最低な表現だけど、でも正直な気持ちだった。亀梨さんはKAT-TUNと添い遂げる気なんだろうに、盟友を得たかのように笑う山下くんにちょっと胸が痛んだ。いやいや俺を振った理由元カノじゃなかったのかよ、まあその元カノはもう既婚者だけど他の男と幸せになるでもなくよりによって不倫沼かよ、みたいな。ユニット組むのが嫌とかでは全然なくて、でも亀梨さんはあなたの唯一の伴侶にはなりえなくない?だって、だってだって、って思ってた。
もう山下くんのことなんか全然追ってないくせに、山下くんは何がしたいんだろう、抜けてまでやりたいことってなんだったんだろう、これだよって言えるような活動してんのかななんて思うことも幾度かあった。なんにも見てないくせに。

耳に入ってくる山下くんの話に色々なことを思ったり思わなかったり、何してるのか全然知らなかったりたまに偶然知ったり、そういう7年間だった。10000字インタビューを読む前にキャプションだけ見ていた。

今日まで支えてくれたのは家族や仲間、カメ、そして何よりファンです。

カメだけ固有名詞出ててちょっと笑って、でもなんかもやもやもした。この7年間何度もそういう気持ちになったし、そういうもやもやが解消されることはほぼなかった。ただなんとなく忘れて目の前のもっとインパクトの強い何かに押し流されて次に行くみたいな。喉に小骨が刺さったまんま、でも別に普段は忘れてるからいーやって感じ。
買ってよかったし読んでよかったと思う。喉に刺さりっぱなしだった小骨たちがようやく抜けて今更血が出てきてるみたいな、そんな感じの気分だ。


■ここではないどこか
1番すとんと胸に落ちたのは、NEWSを抜けた理由についてだった。ああ山下くんは行きたい場所があったんじゃなくて、ここではないどこかに行きたかったんだな。ここから抜け出したかったんだなあって、納得した。痛いけど、でも分かるって思えた。
山下くんと錦戸くんの脱退が発表された時、道理としては「錦戸くんは分かるけど山下くんも!?」だったけど、感情的には「山下くんは分かるけど錦戸くんも!?」という気持ちの方が多分強かった。そもそもの話として抜けたい気持ちだけでグループを抜けられることがあるなんてあの頃は思ってもみなかったから衝撃はとても強かったけど、でも山下くんが終生をここで過ごしたいと心から思っているようには見えていなかったから。

NEWSのメンバーとは、どこかぶつかれないもどかしさみたいなものがありましたね。衝突するんじゃなくて、すり抜けてしまうような感覚。噛み合わないというか。違う絵のパズルだったのかなって思います。
(中略)
今なら、もっと違った解決策を提案できただろうなとは思うかな。
(中略)
あのころはとにかく若くて、NEWSをやめられないなら事務所をやめますくらい、誰彼かまわず殴りかかるような勢いだったから。

この部分を読んで、脱退直後に山下くんの妹さんが公開したブログを思い出した。「8年間という年月の忍耐があったのもわかってほしいです」って言葉を見て、「8年間は忍耐でしかなかったの?なんでそんな言い方するの?」って虚しかった。これは本当はそんなこと思ってたんだ!ヒドイ!と思ったわけではなくて、「NEWSとして過ごした8年間の中にファンの皆さんに言えない苦悩や忍耐もあった」とかそういう言い方してくれたらまだマシなのに、なんでわざわざ苦痛でしかなかったみたいな言葉選びをするんだろうってその下手くそさへの呆れのようなものもあった。でも近くにいたらそう思ってしまうくらい、書いてしまうくらい、あの頃の山下くんにとってNEWSはフラストレーションだったんだろうな。
「男として」「ぶつかりあえる」というようなワードが頻出するページを捲りながら、自分が昔書いたブログのことも思い出した。

求めていたのとは違うメンバーで、期間限定のはずだったのにいつの間にか正式なデビューになっていて、切磋琢磨してきた仲間ではなくて自分におんぶにだっこなやつらと運命の船に乗せられて、いやだったのかもしれない。そういう風に思ったことがあったかもしれない。

めっちゃあってるじゃんて笑えた。そっかそうだよね、そう思ってたよね。なんならそのものズバリ、

NEWSだったころ、僕は"男だろ、自分の足で立てよ。俺に頼りすぎじゃねえ?"ってどこかで思ってた。

って言ってて、まあ驚きはないけどやっぱそう思ってたよねーって。我慢出来なかったんだなーって。泥みたいな連帯感、って当時のコヤシゲのこと私は勝手に思ってた。浮くも一緒、沈むも一緒。でもそんなの山下くんは意味わかんなかったんだろうな。沈むようなやつと一緒にやってく意味なんて全然見いだせなかったんだろうな。山下くんらしいな。


■あの日からのあなた
山下くんのFC会員数は2018年9月時点で約107,000人。ソロでの最新シングルは2013年7月リリースの『SUMMER NUDE'13』、アルバムは2014年10月の『YOU』(ただし2018年11月に新アルバム『UNLEASHED』を発売予定)、ソロとして1番新しいリリースは2016年1月発売のベストアルバム『YAMA-P』だ。ツアーは2011,2012,2013と3年続けてやって、3年空いて2016年、2年空いて今年9月からまたツアー中。
香取慎吾さんとか藤ヶ谷太輔さんとか赤西仁さんとコラボしたり、相対性理論に楽曲提供してもらったりパスピエに楽曲提供してもらったり、うおー羨ましいー!と思う一方で、「アレッ山下くんてそういうのが好きなんだったっけ?」とも思った。リリーススピード、ツアー頻度も決して高くはない。売上、悪くないけど(むしろ今の時代ソロでこんだけ売れる人なかなかいない)、山下くんてこんなもんだっけ?って思ったこと正直何度もある(NEWSの売上とか会員数とか単純に頭割りしたら全然山下くんに負けるのにね)。こんな、こういう、うーんなんだろう、「この人これがやりたくて抜けたんだ!」「これがやりたかったならしょうがない!」って気持ちよく膝を打てる場面があまりなかった。もちろんこれは私が山下くんをもう追いかけていないからで、それをどうこう言う資格はほんとないんだけども今だから言うと、「ソロにならなきゃできないこと、あった?できてる?」って思ったこと普通にある。単純にリリース頻度だけで言えば別にグループにいても今と同じことすんの不可能じゃなかったんじゃないのっていう気持ちになったことも時期によってはあった。
1位を取れないこともあったこと。東京ドームにまだ1度も立っていないこと。完膚なきまでに叩きのめしてくれたら泣きながら受け入れられるのに、4人束になっても敵わなければよかったのにそうじゃなかった。
"今"と"これから"に対する弱音は一つもないインタビューだったけど、本人にとっても100%満足できる成果を叩き出せてきたわけじゃないのはわかって事実確認という意味で少し安心した。安心とも少し違うけど、なんだろう、「絶対なんとかしてやる」「絶対俺ならどうにかできる」って思うような状況ってつまり、言ってしまえば逆境じゃん。何もかもが順風満帆ではなかったこと、不安になってもおかしくない状況でもあったこと、私が勝手に「そんなもんじゃないはずじゃないの」ってモヤモヤしてた時は多分山下くんも実績に満足してたわけじゃないこと。後悔していないのは今がうまくいってるいってないの話じゃなくて、自分の心に従った、従えてるからだってこと。そういうのが合ってて納得した。


■男だろ
もう一つ納得できたこと。NEWSじゃなくて違うグループだったら、違うメンバーだったらって話。「ぶつかりあえたと思う」「今もバチバチにやってるんじゃない」
結局元カノじゃん。て確認して、いやでも根底にある体験がそうなだけであって、結局のところあの頃得られた充実がNEWSにはなかったって話なんだよね。切磋琢磨とか競い合いとか、そういう山下くんにとってグループの必須条件だったものがNEWSにはなくて、だから山下くんにとってNEWSは仲間だけど仲間じゃなかったんだな。
インタビュアーの「カメだったら〜」って質問、もうこんなの燃やしたい人の質問だろ放火魔かよって笑ってしまった。案の定引火性の答えを返す山下くんはやっぱり保身がヘタクソで、7年経ってもそんなところは変わらないなんて変なの。
間に合わなかったんだなあ、ピンクとグレーは。2011年の早春に書かれた加藤さんの処女作『ピンクとグレー』は、発売こそ脱退後の2012年だが執筆自体が成されたのは2人の脱退を加藤さんが知る前だ。このままじゃまずいって焦燥感の中で、グループのために何かできることを探して書かれたものでもあった。今のNEWSいい状態だなあって思うよって旨の言葉を見て、ああ本当に決断があと少し遅かったら、あれがもう少し早かったらこれのタイミングが違ったら、って思わずにはいられなかった。
テレビで泣いてるとこ見て「男だろ」って思ったって言うけど、そんなこと言わなくていいようなメンバーだったら捨ててなかったはずだ。嫌いで別れたわけじゃないって、この7年間で幾度か聞いた。それを疑うつもりはない。だけど同時に悲しかった。嫌いで別れたわけじゃないって、ほんとのほんとにただただ噛み合わなくて実力不足で及第点じゃなかったからああなったんだって、私はやっぱり6人のNEWSが好きだから、6人のあり方を6人自身に愛してもらえなかったのが悲しかった。
山下くんが心から求める仲間は結局斗真くんで長谷川くんで風間くんで、山下くんが心から絆を感じられる人とデビューできていたら、今頃どんな景色が見えていたんだろう。


あと、これはちょっと本筋からズレるけど、繰り返される「男」って単語には違和感というかもどかしさがある。男だろ、男だから、男なのに、男として。まだ33歳なのになー。なんか別に、女だって仕事がんばるし好きな人守ってあげたいし自己実現したいし自分の足で立ちたいぜ。それは別に男だけの特別な気持ちじゃないぜ。それ全部、人間だからで別に良くない?ほんと本筋関係ないけど。


■これからの話
いつか6人で食事に行ったとか会ったとかそういう話を聞いたらこのわだかまりはほどけるのかな、と書いたことがある。

俺が言ってはいけないのかもしれないけど、過去にとらわれたくないし、もし何か壁があるなら、そんな壁は壊せばいい。
(中略)
たとえば俺のアルバムに誰か参加してくれないかなとか。みんなかハッピーになれる選択肢があるんじゃないかなって思ってる。

断言してもいいけど、ねえよ。
もうみんながハッピーになれる選択肢なんかどこにもないよ。戦争がなくならないのと同じだよ。やりたいならやればいいって思う。アルバムに誰かが参加とか、少プレなりなんなりでお互いの曲のマッシュアップやるとか、おもしろい試みだと思うしやったら見ると思う。でも、壁が完全に壊れることなんか二度とない。それだけの傷、それだけの痛みがあって、それを分かってでも決めたことでしょ。"8年間の忍耐"が実を結んでその分だけ8年分の愛着と思い出がファンにはあって、それを自分の心一つで捨て去ったのに、わざわざ壁を厚く高くしたのに何言ってるの。あの時、私たちがあなたを憎まないで済むような、憎しみが少しでも減るようなやり方選んでくれなかったじゃん。難しい方を選びたいとか、自分の心に正直とか、どうしようと全部山下くんの勝手だよ。でも、あの時あなたがやったこと、やっぱり全然ファンに優しくはなかったんだよ。後悔してくれとは言わない。間違ってたとも言わない。だけどあの傷も痛みもなかったことにはならない。好きでいる限りずっと。


■血
どうして斗真くんも長谷川くんも風間くんもいなかったんだろう。どうして1人にさせられたんだろう。時は戻らないし誰もやり直せない。分かってるのに今でも納得できない。何かがほんの少しでも違っていたら、何もかも違う未来に辿り着けただろうか。
インタビューの冒頭、「あの頃とは違う僕になってると思います」と山下くんは述べていた。でも読んでみたらそこには私の知ってる山下くんがいた。不器用で保身の下手な山下くん。愛は無関心よりずっと容易く憎しみに転じるものだから、もっと上手にやってほしかった。あなたを憎まないでいるために、私とても苦しかった。憎しみはないのに恨みがましい気持ちはまだ消えてないんだなって自分にうんざりする。
山下くんは山下くんのままだったし薄々感じてたことは大体あってた。なんとなく分かってたけど目を逸らしてたこと、今になって唐突に答え合わせができてしまった。痛いなあ、痛いよ。もうほとんど無関心に近いくせに、やっぱり無痛にはならないや。でも多分、もやもやのまま複雑な気持ちを置き去りにしてくるよりは傷ついた方がずっといい。ああ、あなたに愛されたかったな。あなたがとうとう愛してくれなかったものを、私愛してたよ。