英雄は歌わない

世界で一番顔が好き

手越祐也の強さとやさしさ

 

MYOJO9月号を読んだ。毎月発売日を心待ちにするこの感じを久々に味わえて、とても楽しい3か月間だった。

手越祐也の10000字インタビューを読んで、まず真っ先に浮かんだのは微かな悔しさだった。後悔かもしれない。別に内容が気に食わなかったわけでも彼を信じられなかったわけでもなくて、NEWS4人のこのインタビューを発売順に読みたかったなあと思ったのだ。

 

 

手越さんの言葉はとても強くて、相変わらず本能の人だ。意志の力で本能を高めて生きている人。闘う意志を絶対に捨てない人。なんて悲愴感のない、なんて悲劇感のない言葉の数々だろう。小山→加藤→増田→手越の順にインタビューを読んでいたら、徐々に悲しみが薄れて闘志へ変わっていくのを感じられて私自身も手越イズムに感染?していたかもしれない。

買い逃した過去は変えられないし先に読んでしまった過去も変えられないので、そんなことをくよくよ考えても仕方ないのだけれど。それにしてもなんで買い逃したんだろう、絶対Twitterとかでいろんな人が話題にしてるの見たはずなのにな…?と考えていてふと気づく。

もしかして:就活

というわけで自分のことを許した。5秒くらいで許した。

 

 

 

強い人というイメージを抱かれやすい手越さんだが、加藤さんは彼を評して「やさしい」と言う。今回のインタビューの彼も、終始強かった。強靭でポジティブで迷いなくて、強くて、そしてやさしかった。

「『星をめざして』で初めてセンターに立ったときから、なんて気持ちのいい場所なんだろうと思っていた。ずっとセンターになりたかった」「2人が脱退すると知ったときは俺がメインになるチャンスだと思った」「不思議なことに、2人を見ても元々同じグループだったという気がしない。最初から今の4人で組んでたような気がする」

手越がいれば大丈夫だ――ページをめくりながらいつもと同じことを思った。大丈夫、手越がいるから。

 

 

私は、徹底的な自己プロデュース≒キャラづくりでガチガチに身を固めている増田さんのことをよく『アイドルモンスター』と評しているけれど、彼の隣に立っている手越さんもまたある種のモンスターなのだろう。彼の武装は増田さんよりずっと不器用で生きづらそうだ。

増田さんがキャラクターを身にまとって生きているのに対して、手越さんは人格を身にまとって生きているように見える。「カメラさえあれば怖いものなんてない」「カメラさえ回っていればどんなことでもできる」と豪語するけれど、きっとそんなもんじゃなくて、カメラどころか人の目さえあればいつだってみんなが知ってる手越祐也なんだろうなと時々思う。『みんなが知ってる手越祐也』なんてそんなもの所詮パブリックイメージなのに、絶対にそれを脱がないで、いつもいつでも『手越祐也』でいてくれる強さを手越祐也は持っている。『手越祐也』でいてくれようとする優しさを持っている。

(手越祐也って単語がゲシュタルト崩壊しそう…)

 

そもそも明星の『裸の時代~僕がジュニアだった頃~』『Stand by me ~いつもそばにいてくれたね~』という企画名自体が暗に「インタビュー対象の本音を引き出しますよ」「彼らの弱音や裏の姿を見せますよ」という意図を見え隠れさせる。

実際、そういうものをさらけ出してくれる人のインタビューはとても心動かされるし、加藤さんのインタビューとかもうこのまま一本映画撮りたい気分にさせられる。この人のことずっと見てたいし、この人の言葉ずっときいてたい!と思う。

ところが手越さんのインタビューは勇ましすぎて、そういう感じはあまりしない。10000字インタビューじゃなきゃこんなこと聞けない!って話もあまりなかった。読んだ率直な感想をさっくり述べると、“「俺は『手越祐也』であって手越祐也じゃないし、ずっとそれで生きてるしそれでいいと思ってるから、生身の俺とか裏とか中の人とか探りに来るのマジ迷惑」って言われてる気になった。”である。

 

 

 

歌手や俳優などと違って一個人そのものが消費の対象となるアイドルという職業において、ありのまま剥き出しの弱さを見せてくれる加藤さんのやさしさと、極限まで濃縮した強さだけを見せようとする手越さんのやさしさと、どちらが正しいのかを私は知らない。きっとどちらも正解なのだと思う。

誰もが手越みたいに強く生きられるわけじゃないんだよ、と叫びたくなることがある。「俺、迷う意味が分からない」とか「俺が生きてきた人生の中のどれか一つでも欠けてたら、今の俺はいない。すべての出来事に感謝してる」とか、さらには「努力の先に成果があるなら、それが楽しみだから辛くない」なんて、強すぎる言葉の数々を彼は吐く。

その度に、誰もがお前みたいに生きられるわけじゃないんだぞ、と思う。

 

 

でもきっと手越だって、そんなことはわかっているのだ。それでも、『手越祐也』はそう思うから、いつだって彼はそうとしか言わない。そう言うことを選んできた。動いたりとまったりする心臓なんていらない。動き続けるから心臓なんだ。

アイドルに対して24時間365日アイドルでいてくれなんて願うのは不条理なことだとわかっている。だけど手越はそうしようとするくらい優しくて、そうするくらい強いから、そんな不条理な願い以外にできることが見つからない。どうか手越が志す通りに彼の精神力が無尽蔵なものでありますようにと、めちゃくちゃな願い事を今日も彼に押し付けて、にやにや彼を眺めてゆこう。

 

 

っていうプロローグでした。